本文へスキップ

さかもと音楽院は千葉県千葉市美浜区のピアノ教室です。

お電話でのお問い合わせはTEL.043-376-5989

〒261-0012 千葉県千葉市美浜区磯辺8-15-6

コラム 井谷名誉教授の房総日記 Vol.1

2019年10月28日

最近J・S・バッハのクラヴィーア作品について、シリーズで講座を持ちました。バッハが世に出るまで、その社会背景、インヴェンションの世界とそのインヴェントの作法(さくほう)、フーガ入門といった内容でした。

いまさらバッハ?!されどバッハです。

関東へ越して来て、毎日ダイナミックな人の動きや物流の渦の中の人々を目にしていると、はたして、我々にとって西洋音楽やクラシック音楽といったものはどういう意味を持っているのだろうか、という疑問が発端としてあったかもしれません。同業のある先生が日本の音楽大学は「近世音楽大学」だと皮肉を込めておっしゃっていました。まぁ我々が音楽家を標榜していられるのも、近世以降の作品の恩恵に浴しているわけで、その時代と作品にばかりスポットが当たるのも無理もありません。西洋音楽史というのは日本ではせいぜいバッハ以降が対象です。しかし、グレゴリア聖歌やフレスコバルディ、さらにはネウマ譜や中世のグイードの音楽理論などに触れ、ローマ、ギリシャの音楽にまでさかのぼると、自然への回帰と畏敬、神への祈りと唱和といった音楽の起源に行きつきます。これらこそは洋の東西を超えた事柄です。

バッハの生誕と存在を視座に据えると、それ以前の音楽の奔流がBach(小川)に行きつき、そこからMeer(大海)へと注がれる。そんな目線でバッハの音楽とそれ以降の西洋音楽を理解し感じ取って、そして演奏へとつなげていければ。そんな姿勢でバッハのクラヴィーア作品を論じた積りです。

Ut Re Mi の長3度、Re Mi Faの短3度、そしてドレミファとソラシドの2つのテトラコードを共通項として2つの歴史的クラヴィーア作品(「インヴェンションとシンフォニア」、「平均律クラヴィーア曲集」)を探索するのも面白い取り組みです。私の学生時代から見ても、半世紀近い時間を経て、さらに深まった新しい研究成果や発見の数々で、古典といわれるものこそが、じつはどんどんと新しく更新されているのです。そういった音楽最前線を垣間見ることができるのも、デジタル化、グローバル化がもたらす恩恵です。面白い時代だと思います。

 

活水女子大学名誉教授 井谷俊二